ジョブズ氏がやり残した未来
先日、AP通信が発表した2011年の10大ニュースによると、米アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズ氏の死去は選外となったようだ。しかし、私にとってはジョブズ氏の死去は東日本大震災に次いで大きなニュースだった。死後発売されたジョブズ氏の伝記を読んでなおさらその思いを強くしている。
「The Computer for the Rest of Us(取り残された人々のためのコンピューター)」を掲げて登場したアップル製のMac(マック)。パソコン未経験だった当時17歳の私にもすぐに使えるほどで、その衝撃は今でも忘れられない。ウェブの“祖先”であるマルチメディアソフト「ハイパーカード」と音声合成機能を使って英語の授業を受けることができるし、米国のパソコン通信網にも簡単にアクセスできる。ウィンドウズもまだ登場しておらず、PC−98が、呪文のような記号の羅列で操作されていた昭和末期の話である。ジョブズ氏は「非日常」だったコンピューターを「日常」に転換するきっかけをつくった先駆者だったと思う。
意外だったのはジョブズ氏と日本との関わりである。ジョブズ氏は大学で活字の美しさを極めるカリグラフィー(西洋書道)に没頭し、そして中退後にアジアにはまり、日本の禅宗に悟りを見いだしたという。「シンプルな機能美」「直感で分かるマウス操作」といったMacの原点はここにあるのだろう。
デジタル業界の「預言者」といわれるジョブズ氏だが、そんな彼にもやり残したことがあった。次世代の手助け、つまり教育改革である。
一つは未来を担う子供のために分かりやすいデジタル教科書をつくること。もう一つは、「iPhone(アイフォーン)」を通じて子供たちの意思を社会に反映させる仕組みをつくることだった。ジョブズ氏が生きていれば、「i教育」「i政治」といったアプリを登場させ、子供たちを含む幅広い層が社会にアクセスすることが可能になっていたのではないか。そこには恐らく、より良い社会が「子供たちの未来」を明るいものにするという信念があったに違いない。
養父母を尊敬しながらも、両親を知らない苦痛を心に抱えていたというジョブズ氏。そんな生い立ちが「子供の未来のため」という思いを抱かせたのかもしれない。私たちはジョブズ氏の遺志を継ぐことができるだろうか。
東京電力、政府に追加支援6000億円要請へ
東京電力が政府に対し、福島第一原子力発電所事故の賠償金支払いのために6000億円規模の追加支援を年内に要請する方向で調整に入った。
東電は11月に約1兆円の支援を受けることが決まっている。だが、新たに約150万人の自主避難者らへの賠償金を支払うことになり、将来的に資金が不足するためだ。
東電は28日にも、政府が賠償支援のために設立した原子力損害賠償支援機構に追加の資金支援を要請する方向だ。政府は26日、警戒区域を来年4月をメドに解除した後、新たに設ける三つの避難区域の詳細を示す方針だ。自宅に戻るまでの期間なども示される見通しで、追加資金の要請額が膨らむ可能性もある。
東電は11月に政府が認定した緊急特別事業計画で、原子力損害賠償法に基づく国の補償金1200億円と支援機構を通じた約8900億円の計約1兆円の資金援助が認められた。当初はこの資金で年度内の賠償支払いは賄えるとみていた。
最高税率「45%」…政府税調、5%上げで調整
政府税制調査会は20日、税と社会保障の一体改革に伴う消費税増税に合わせ、所得税の最高税率を現行の40%から45%に引き上げる方向で調整に入った。高所得者ほど税負担が重くなる累進機能を強化するとともに、消費増税時に負担感が増す低所得者の不公平感を和らげる。政府・与党が年末をめどにまとめる一体改革素案に方向性を盛り込みたい考えだが、民主党内では負担増への慎重論もあり、調整を続ける。
所得税は、年収から各種控除を差し引いた課税所得額に応じ、税率が段階的に上がる仕組み。70〜80年代の最高税率は75%だったが、消費税導入や景気対策に伴う所得減税で引き下げられ、現在は課税所得1800万円超の部分にかかる40%が最高税率になっている。
ただ、高所得者から集めた税金を社会保障などに使う再分配機能が低下しているとの指摘があり、政府税調は見直しに着手していた。また、課税所得に応じて六つある税率段階を増やし、高所得の部分にかかる税率を引き上げるなどの措置を検討する。